スイス旅行記のスピンオフです。
自分より大きな、ヨーゼフみたいな犬と暮らすことが幼少からの夢でしたが、小学生の頃突然にその夢が叶い、我が家にセントバーナードがやってきました。
前回と同じ写真で失礼 |
病気になった親戚の愛犬で、我が家で引き取ることになったそのセントバーナードの名前は「リキ」。2歳のオス犬でした。私の心は、それまでに感じたこともない喜びで舞い上がりました。
やさしいリキは、噂通りの「ベビーシッター」のような犬。リードを引っ張ることなく、子供の歩調に合わせて歩いてくれる自分よりも大きな犬を、散歩のたびに誇らしく思いました。もう頭の中がリキでいっぱいの毎日…目には見えない抱っこ紐で、頼りになるリキに自分を縛り付けているような精神状態でした。
でも数年後、リキは親戚のもとへ返されることになりました。
リキは病気がちな犬でした。セントバーナードが健康問題の多い犬種であることを両親は知らずにリキを引き受け、
飼育の大変さに苦労していた頃、渡りに船のように親戚の病気が治ったので、返すということになったようでした。リキにとっては、嬉しいことだったのかもしれません。
愛しいリキは、私の元を去りました。草の上に寝転んで遊んだ日々。自分の手のひらよりも大きな足、ステーキのように分厚い耳…
何もかも消えてなくなってしまった。ペットとの死別は辛い。生き別れも、それはそれは辛い。私のリキが私のリキではなくなったことを、子供ながらにどうにかして理解しなければならず、
私の心は破れました。リキとの別れの悲しみがトラウマになり、何十年もたって大人になっても、リキを思い出しては泣き…カウンセラーからの指導を受け、最近になってやっとだいぶ落ち着くことができたほど。
スイス旅行を思い立った時、セントバーナードのふるさとの国で、リキの「おもかげ」に触れられるのではないかというような気持ちになりました。
セントバーナードに会いたい、触れたい、ということではなく、セントバーナードのふるさとの国を見ることが、良い経験になるような、小さな期待がありました。
スイスではどこのおみやげやさんでも、セントバーナードグッズがたくさん売られていました。ぬいぐるみ、キーホルダー、マグネット…でも実際にセントバーナードを見ることはなく、
インターラーケンのおみやげやさんでキットの首輪を買った時、犬好きだというお店のマダムに「セントバーナードはこの辺にはいないんですね?」と訊ねると、マダムは言いました。
「お祭りのパレードの時だけ、ここに集まるのよ。都市には向かない犬だから」。
セントバーナードはセントバーナードに適した場所で暮らしている。大切にされている。なぜか救われたような気持ちになり、スイス旅行にひとつ、自分だけの大切な意味をみつけたように思えました。
アニマルシェルターで犬のボランティアをしているので「子供が犬を欲しがっているんだけど、どんな犬がおすすめですか?」とお子さんを持つ方に聞かれることがあります。
私の答えはいつも同じ、「親御さんの手に負える犬を選んでください」。子供が小さければ、世話は親の仕事になるし、中学生や高校生なら、いずれ犬を親に託して出ていってしまう。
犬を飼いたがるのは子供でも、犬を手放す時は大人の事情。子供の心を傷つけない犬選びをしてほしい。適した場所、適した人に飼われるのが、犬にとっても幸せですよね。
家族が決まったよ |
リキを失い、心に空いた大きな穴を、今はキットが埋めてくれています。キットの前にも何匹も犬を飼ったけれど、他の犬では埋められなかったリキの穴。
「あいつまだ泣いてるな」って、リキが会わせてくれたのかな。本当は大型犬を希望していたけれど、ちゃんと私の手に負える犬をみつけてくれたのかも。
ということにしておきますか |
こんな経験があるせいで、「達者でナ」(三橋美智也)を聴くと、号泣しちゃう!
♪わーらァにぃまみれてよォ〜 |
スイスの景色と、やさしかったリキの姿が重なります。スイスの旅で私は、確かにリキのおもかげを見ました。いつかハチ公と先生みたいに天国で会えたなら、もう離れないように、今度は本当の抱っこ紐でリキと自分を縛りたいと思います。
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どんなに辛かったことでしょう、想像するだけで胸がはりさけそうになります。Yumikoさんのことを想うリキがキットを連れてきてくれたんですね。
返信削除とてもパーソナルなお話をシェアしてくださりありがとうございます。スイスにも行ってみたくなりました。でもわたしも愛犬2ひきを置いて旅行にいくのがとても苦手です。どこでもドアがほしい。。
悲しい話にお付き合い下さり、ありがとうございます!自分の気持ちも少し整理できるなと思い、思い切って書くことにしました。
削除スイスはとても素晴らしい国でした。またいつの日かきっと、行きたいと思っています。が、 Aiko さん同様、愛犬を残していくのが辛いので…またいつの日か、ですね〜。